概念一覧
706件D
G
M
N
r
S
T
W
X
ア
アイデンティティの消失
かつて自分だと思っていた存在が解体され、社会的役割・関係・記憶から切り離されること。カフカの変身が極端な比喩として示すように、人間としての承認を失うことで自己も失われる。
アノミー
デュルケームが提唱した概念。社会的規範が弱体化・消失し、個人を導く集合的な行動指針が失われた状態。急激な社会変動期に自殺率が高まるのはアノミー的自殺によると説明した。
アルゴリズムへの権威委任
人間の判断をアルゴリズムが代替・凌駕するようになり、人間が決定権を失いつつある趨勢。
アルゴリズム的プロセス
規則に従って機械的に実行される手続きであり、実行者の知性や意図に依存しない計算過程。デネットは自然選択をこの観点から再定義し、知性なき過程が複雑な設計を生み出せることを示す。
アロポイエーシス
自己以外のものを産出するシステム。オートポイエーシスの対概念として、機械や人工物を特徴づける。
アンカリング
最初に提示された数字や情報(アンカー)が、その後の判断に過度な影響を与える認知バイアス。
アンチフラジャイル
変動・ストレス・ランダム性によって強くなる性質。壊れやすさでも強靭さでもない第三のカテゴリ。
ア・プリオリな認識
カントの認識論の核心。経験に先立ち、経験から独立して普遍・必然的に成立する認識。時間・空間という感性の純粋形式と、カテゴリーという悟性の純粋概念がその例。人間の認識能力が世界を構成するという転回。
ウ
エ
エコー
ジョン・ホランドが開発した、生態系や経済システムをシミュレートする複雑適応系モデル。
エディプスコンプレックス
フロイトが提唱した心理発達の概念。男児が母親に性的欲望を向け父親をライバルとして恐れる(去勢不安)段階。この葛藤の解決が道徳的良心(超自我)の形成につながるとした。
エディプスコンプレックス批判
フロイト・ラカン的精神分析が欲望をすべて父・母・子の三角形に還元し、社会的・政治的な欲望の多様性を抑圧するという批判。エディプスは普遍的構造ではなく社会的発明だとする主張。
エナクション
認知とは既存の世界を表象することではなく、行為を通じて世界を「立ち現わせる(enact)」ことだという考え方。知覚・行為・環境は循環的に共構成される。
エニグマ
第二次世界大戦中にナチス・ドイツが使用した電気機械式暗号機。複数のローターと反射板による多段換字で膨大な鍵空間を実現したが、アラン・チューリングらによるボンブ機で解読された。
エピステモロジー
知識がいかにして成立するかを問う哲学的領域。ベイトソンにとっては抽象的問いではなく、生物が環境をいかに知覚・表象するかという実践的・生物学的問題でもある。
エピステーメー
フーコーが用いた、ある時代の諸学問の根底にあって何が知として語りうるかを無意識的に規定している認識の布置・規則の総体。個々の学説そのものではなく、それらを成立させる共通の認識の場を指す。
エリートの抵抗
経済的・政治的特権を持つ少数のエリートが、自らの地位を脅かす制度改革や技術革新に抵抗する行動様式。改革の失敗や停滞の主要因となる。
エントロピー増大の法則
閉じた系では無秩序さ(エントロピー)が増大し続けるという物理法則。秩序は自然に崩壊する方向に進む。
エージェントベースモデル
自律的に行動する多数のエージェントの相互作用から、システム全体の振る舞いをシミュレートする計算手法。
オ
カ
カオスの縁
完全な秩序と完全な無秩序の中間領域で、最も複雑で適応的な振る舞いが生じる臨界状態。
カオス理論
決定論的なシステムでも初期条件のわずかな差異が予測不可能な複雑な挙動を生み出すという理論。乱雑に見える現象の背後に隠れた秩序を見出す新しい科学。
カント倫理学
行為の正しさは結果ではなく動機・義務に基づくとするイマヌエル・カントの倫理体系。人間を目的として扱うことを要請する定言命法が核心。
カンブリア爆発
約5.4億年前に起きた動物の多様化の爆発的増大。グールドはバージェス頁岩の再解釈を通じて、この時期に現在よりはるかに多様な体制設計が試みられ、その後の選択は適応の優劣ではなく偶然によったと論じた。
ガ
キ
ク
クオリア
赤の赤さ、痛みの痛さなど、意識的体験の主観的な「感じ」の質。物理的説明が困難な意識の本質。
クズネッツ曲線
経済発展とともに格差がまず拡大し後に縮小するという逆U字型の関係(サイモン・クズネッツが提唱)。
クラスタリング係数
あるノードの隣接ノード同士がどれだけ互いにもつながっているかを示す指標(0〜1)。「友人の友人は友人」という傾向の強さを定量化する。高いクラスタリング係数は局所的なコミュニティ構造の存在を示唆する。
クレアチュラとプレロム
グノーシス主義に由来するベイトソンの二分法。プレロムは物理的力と量の世界、クレアチュラは差異・パターン・情報が支配する生命・精神の世界。この二つは根本的に異なる論理で動く。
クレオール・ナショナリズム
旧世界からの移民の子孫として植民地で生まれ育ちながら、本国人と同じ言語・文化を持つクレオール層が主導したナショナリズム。南北アメリカの独立運動がその典型例。
グ
グライダー思考と飛行機思考
外から与えられた知識を処理するグライダー型と、自力でアイデアを生み出す飛行機型の思考様式の対比。
グランドデザインの欠如
明確な戦略目標や全体構想が欠如し、場当たり的な作戦遂行に陥る状態。長期的視点や終戦シナリオが描けていない。
グルーピング
情報や要素を意味的なまとまり(グループ)に分類・束ねる思考操作。MECE原則に基づき、複数の要素を抽象化してメッセージに変換する技術。
グローバリゼーションの不平等
貿易・資本・情報のグローバルな自由化が各国内・国家間の経済格差を拡大させる現象。恩恵が一部の国・階層に集中し、多くの労働者が恩恵を享受できない構造的問題を含む。
グローバリゼーションの物質的基盤
グローバルな生産分業と貿易の拡大を可能にした物理的・技術的インフラ。コンテナはその核心。
グローバルワークスペース
前頭前野を中心に脳全体に情報を広く共有する「作業台」。これが活性化したとき意識的体験が生じる。
グローバルワークスペース理論
バーナード・バーズが提唱した意識の認知科学的モデル。情報が脳内の「グローバルワークスペース」に放送されることで意識的になるとし、広範な認知プロセスへの情報の利用可能性を意識と同一視する。
ゲ
コ
コギト
デカルトが提示した哲学の第一原理「cogito ergo sum(我思う、ゆえに我あり)」。あらゆるものを疑ってもなお、疑っている自分の思惟だけは疑えないという確実性の基点。
コズミック・インフレーション
ビッグバン直後に宇宙が指数関数的に急膨張したとする理論。アラン・グースらが提唱し、宇宙の均一性・平坦性・磁気単極子問題を解決する。
コミットメントと一貫性
一度コミットしたことに一貫した行動を取ろうとする心理的傾向。
コミュニケーションのデジタル・アナログ
コミュニケーションを離散的な記号体系(デジタル)と連続的な関係的信号(アナログ)の二層として捉える枠組み。言語はデジタル寄り、表情・声調・姿勢はアナログ寄りとされる。
コミュニケーション的合理性
言語を通じた相互理解と合意形成を目指す合理性の様式。目的達成のための道具的合理性とは異なり、参加者が妥当性要求を共有しながら協調的に行為することを可能にする。
コミュニケーション的行為
相互理解を志向し、言語的・非言語的シンボルを通じて参加者が合意に基づいて協調する行為様式。戦略的行為や目的合理的行為とは対照をなす。
コミュニタリアニズム
個人は共同体・伝統・文化によって形成されるという立場から、自由主義的な「負荷なき自己」観を批判する政治哲学。マッキンタイア、サンデル、テイラーらが代表。
サ
し
シ
シェーンハイマーの実験
1930年代に放射性同位体を用いて、生体内のタンパク質が絶えず入れ替わっていることを証明した画期的な実験。
システム1とシステム2
人間の思考を、自動的・直感的なシステム1と、意識的・論理的なシステム2の二つに分類する理論。
システム理論
システムを全体として捉え、要素間の関係性に注目する理論的アプローチ。ベルタランフィらによって発展した。
シミュラークル
ボードリヤールの概念で、参照すべきオリジナルを持たず、コピーそのものが自律的に増殖していく状態を指す。
シャボン玉モデル
それぞれの生物は自分の知覚できる範囲だけに閉じたシャボン玉のような空間に包まれて生きている、とする比喩表現。環世界の閉鎖性と主体ごとの独自性を直感的に伝える。
ス
スキゾとパラノ
ドゥルーズ=ガタリによる欲望の二様式。パラノは固定化・領土化、スキゾは脱領土化・逃走を象徴する。
スキン・イン・ザ・ゲーム
自分が推奨することのリスクを自分でも背負うという倫理原則と実践。
スキーマ
ジョン・ホランドの理論における、適応システムが環境を認識し行動するための内部モデルやルール。
スケープゴート
ジラールが分析した機制。共同体内の模倣的暴力が臨界に達すると、全員の暴力を一人または少数に集中させることで秩序が回復する。この犠牲者を「神聖化」することが宗教の起源となる。
スケールフリーネットワーク
ノードの接続数(次数)がべき乗則に従い、ごく一部のハブが膨大な接続を持つネットワーク構造。ランダムネットワークとは異なり、「典型的なノード」が存在しない。インターネット、代謝ネットワーク、社会的引用ネットワークなどで広く観察される。
ステレオタイプ
特定の集団・文化についての単純化・固定化されたイメージ。繰り返し再生産されることで「自明の真実」として流通し、実際の多様性や複雑性を覆い隠す。
ストレンジ・ループ
階層を上昇または下降していくと、いつの間にか出発点に戻ってしまう自己言及的な構造。
スノビズム
社会的威信を持つ他者の価値判断や嗜好を模倣することで自己の欲望を形成する態度。欲望の対象それ自体よりも、「それを欲する価値ある人物に近づくこと」が真の動機となる。
スピーナムランド制度
1795年にイギリスで導入された、パン価格に連動して最低賃金を補助する救貧制度。労働市場の形成を遅らせた一方で、後に廃止されたことで産業労働者階級が創出された。
セ
ゼ
ソ
タ
タイプとトークン
哲学者チャールズ・パースが区別した概念。「タイプ」は抽象的な種類や型、「トークン」はその具体的な個別事例。例えば「犬」という語(タイプ)と、ある文中に現れた「犬」という文字列(トークン)は別物。
タニヤマ・志村予想
すべての有理数体上の楕円曲線はモジュラー形式と対応するという予想。谷山豊と志村五郎が1950年代に提唱し、1995年にワイルズがフェルマーの最終定理証明の過程で部分的に証明した。
タンパク質
アミノ酸が連なった生体高分子で、生命活動のほぼすべての機能を担う。酵素として化学反応を触媒する役割が重要。
タンパク質の折りたたみ
アミノ酸の鎖が特定の三次元構造に自発的に折りたたまれる現象。この立体構造が機能を決定する。
ダ
チ
チャーチ=チューリングのテーゼ
「計算可能な関数」とはチューリングマシンで計算できる関数と一致するという主張。アロンゾ・チャーチのラムダ計算とチューリングマシンが等価であることに基づく。計算の限界を定める基礎命題。
チューリングテスト
機械が人間と区別できないほど知的な振る舞いをできるかを問う思考実験。1950年の論文「Computing Machinery and Intelligence」で提唱された。人工知能の知性を評価する基準として広く参照される。
チューリングマシン
アラン・チューリングが1936年に提案した計算の抽象モデル。無限のテープと読み書きヘッドからなる仮想機械で、アルゴリズムで解ける問題の範囲を厳密に定義した。現代のコンピュータの理論的基礎となっている。
テ
デ
ト
ナ
ニ
ネ
ハ
バ
パ
パスカルの賭け
神が存在するかどうかを賭け(ゲーム理論的観点)から論じたパスカルの議論。神が存在すると信じて生きた場合の期待値は、信じなかった場合の期待値よりも高い(無限の天国 vs. 有限の損失)。信仰の合理的根拠を提示しようとした。
パターンをつなぐパターン
生物・精神・自然に共通して流れる構造的パターンへの着目。カニの爪とヒトの指、メモの構造と細胞分裂——異質に見えるものを同型として結ぶ「つながりのパターン」が存在するというベイトソンの直観。
パノプティコン
中央の監視塔から全囚人を見渡せる設計の刑務所。被監視者が常に見られているかもしれないと意識させる権力技術。
パラダイム
クーンが提唱した科学哲学の概念。特定の時期に科学者共同体が共有する世界観・問題設定・解法の枠組み。「通常科学」はパラダイム内での謎解きであり、異常現象の蓄積が「科学革命」によるパラダイム転換を引き起こす。
パラダイムシフト
問題を解決しようとする際、従来の前提や世界観そのものを見直し、全く異なる視点から問題を捉え直すこと。トーマス・クーンが科学史で提唱した概念が社会・ビジネスにも適用される。
ヒ
ピ
フ
フィボナッチ数列
各項が前2項の和である数列(1,1,2,3,5,8,13...)。自然界の螺旋構造と深く関連する。
フェルマーの最終定理
n≥3 のとき x^n + y^n = z^n を満たす正の整数解は存在しないという定理。358年間証明されず、アンドリュー・ワイルズが1995年に楕円曲線と保型形式の対応を用いて証明した。
フェルミのパラドックス
宇宙の広大さから知的生命体が多数存在するはずなのに、なぜ接触がないのかという謎。
フォン・ノイマン・アーキテクチャ
プログラムをデータと同じメモリに格納するコンピュータ設計の基本構造。演算装置・制御装置・記憶装置・入出力装置からなる。現代のほぼすべてのコンピュータの基盤となっている。
フラクタル
どのスケールで拡大しても同じような構造が繰り返し現れる自己相似的な幾何学的形状。マンデルブロ集合や海岸線の長さの問題がその代表例。
フレーミング効果
同じ内容でも、提示の仕方(枠組み)によって人の判断や選択が変わる現象。「90%助かる」と「10%死ぬ」は同義だが、受け取られ方が異なる。
ブ
プ
ヘ
べ
ホ
ポ
マ
ミ
ミラーニューロン
他者の行動を観察するだけで、自ら同じ行動をするときと同様に活動するニューロン。イタリアの研究者リゾラッティらがマカクザルで発見し、共感の神経基盤として注目された。
ミーム
リチャード・ドーキンスが提唱した文化の基本単位。遺伝子が生物進化の複製子であるように、ミームは模倣によって人から人へと伝わる思想・行動・様式などの文化的情報の単位。自然選択と類似したプロセスで増殖・変異・選択される。
ミームプレックス
互いの伝達を助け合うことで一緒に広まるミームの集合体。宗教・イデオロギー・科学理論などは、多数のミームが相互補強して安定した複合体を形成している。個々のミームより大きな単位で選択が働く。
メ
メタフィクション
作品が自らの虚構性・創作過程・語り手の存在を意識的に露わにする文学的手法。ボルヘスの伝奇集が先駆けとなり、作者と作品の関係、現実と虚構の境界を問い直す。
メタ循環評価器
SICPで登場する概念。Lispで書かれたLispインタープリタ。言語が自分自身を解釈できるという自己参照的構造を具現化し、計算の本質的な自己参照性を示す。
メタ思考
自分の思考プロセスそのものを対象化して観察・改善する能力。
メタ数学
数学的証明や形式体系そのものを数学の対象として研究する分野。ヒルベルトが創始し、形式体系の無矛盾性・完全性・決定可能性などを厳密に扱う。ゲーデルはメタ数学的命題を数論に算術化することで不完全性定理を証明した。
メンタル・アカウンティング
お金を「同等な貨幣」として扱わず、用途・出所・カテゴリーによって異なる価値として管理する心理的傾向。経済合理性から逸脱した消費行動を生む。
モ
ユ
ラ
ライナス・ポーリング
アメリカの化学者(1901-1994)。量子化学と分子構造の研究でノーベル化学賞を、後に核実験反対運動でノーベル平和賞を受賞した。タンパク質のαヘリックス構造の発見者でもあり、20世紀を代表する化学者の一人。
ラビリンス
ボルヘスが「伝奇集」で繰り返し用いるモチーフ。出口のない迷宮は無限の宇宙・すべての可能性を含む図書館・分岐する時間の比喩として機能する。認識論的限界と形而上学的探求を象徴する。
ラング/パロール
ソシュールが区別した言語の二側面。ラングは共同体に共有される言語体系(規則・構造)、パロールは個人が実際に行う具体的発話。言語学の対象をラングに限定したことが構造主義的転回を可能にした。 情報理論的には、ラングはチャンネルの規則、パロールはメッセージに相当するとも説明される。
ラングランズ・プログラム
数論・代数幾何・表現論・保型形式など数学の異なる分野を統一的に結びつけることを目指す壮大な研究プログラム。1967年にロバート・ラングランズが提唱した。数学における「大統一理論」とも呼ばれる。
ランダム行列理論
大規模なランダム行列の固有値分布を研究する理論。物理学者ウィグナーが原子核のエネルギー準位研究のために開発し、後にリーマンゼータ関数の零点間隔と驚くべき一致を示すことが発見された。
リ
ル
レ
ロ
悪
暗
意
意味と形式
言語・記号において、意味的内容(何を伝えるか)と形式的表現(どう表すか)は相互に依存しながらも区別される側面。意味は形式を通じてのみ伝わり、形式は意味によって価値をもつ。
意味の担い手
一つの対象が、それを知覚する主体との関係の中で初めて特定の意味を帯びるようになるという考え方。同じ対象でも主体が異なれば担う意味も異なるとされる。
意味への意志
フランクルが提唱した、人間の根本的動機は快楽や権力ではなく生の意味を見出すことだという考え。
意識と注意
意識とは何かという哲学的・神経科学的問題。ブラックモアはダニエル・デネットらの枠組みを援用しつつ、意識を「ミームの競争舞台」として解釈する。注意が向けられた情報が意識に上り、ミームとして伝達されやすくなる。
意識と物理的実在
意識・主観的経験(クオリア)が物理的過程からどう生まれるかという難問。宇宙が数学的構造なら、主観的経験はどこに宿るのかという問いになる。
意識のイグニッション
視覚刺激などが閾値を超えたとき、前頭・頭頂葉を含む広域ネットワークに急激かつ持続的な神経活動の「点火」が生じ、意識的知覚が生まれるという現象。
意識のハードプロブレム
物理的・機能的プロセスがなぜ主観的な経験(クオリア)を生み出すのかを説明する困難を指す概念。デイヴィッド・チャーマーズが命名した哲学的問題。
遺
遺伝子とミームの共進化
遺伝子とミームが互いに選択圧を与え合いながら進化するプロセス。ミームの伝達に有利な遺伝子が選択され、逆に遺伝子の生存を高めるミームが拡散する。この相互作用がヒトの脳・言語・社会構造の進化を説明する。
遺伝子の乗り物
生物個体は遺伝子が自己を複製し存続させるための一時的な乗り物に過ぎないという概念。遺伝子こそが永続的な存在である。
遺伝子プール
ある集団内に存在するすべての遺伝子の総体。進化は遺伝子プール内の遺伝子頻度の変化として捉えられる。
遺伝的アルゴリズム
生物の進化メカニズム(選択・交叉・突然変異)を模倣した最適化・学習アルゴリズム。
遺伝的多様性
集団内・集団間に存在するDNA塩基配列の差異の総体。アフリカ集団は出アフリカ後にボトルネックを経た集団よりも遺伝的多様性が高く、これが「アフリカ起源」の根拠の一つとなる。
一
印
宇
延
演
塩
横
仮
家
科
科学と市民社会
科学的知見を政策決定と市民の生活に結びつける役割。専門家と一般市民の橋渡し。
科学と民主主義
科学的知見が民主主義的な意思決定にどう貢献するか、またその関係における緊張と可能性。
科学における先取権争い
同じ発見や成果を複数の研究者・研究グループが競って追い求め、誰が最初に到達したかが評価と名誉に直結する科学界特有の競争構造。歴史上、ニュートンとライプニッツの微積分論争など多くの前例がある。
科学哲学
科学的説明・理論・実験・確証の論理的構造を分析する哲学の一分野。
科学的発見の功績帰属
共同的・競争的に進む科学研究において、誰の貢献をどう認め、栄誉(論文の著者としての扱いや受賞、歴史的評価)をどう配分するかを巡る問題。女性研究者の貢献が過小評価されがちな傾向は「マチルダ効果」とも呼ばれる。
科学革命
約500年前に始まった、無知の自覚と観察・数学に基づく新しい知識の追求。技術と帝国主義と結びついた。
花
課
貨
過
解
格
核
確
学
学習のレベル
ベイトソンが定式化した学習の階層モデル。学習Ⅰは条件付け、学習Ⅱは学習のコンテクストを学ぶこと(重ね学習)、学習Ⅲはその前提自体を変えること。高次の学習は自己の認識枠組みの変容を伴う。
学習棄却の失敗
過去の成功体験に固執し、環境変化に応じて古い知識や方法論を捨てられない状態。組織学習における重要な障害。
学道
仏の道を学び実践すること。単なる知識の習得ではなく、自己を忘れ、仏祖の行いを体で学ぶ全人格的な営みを指す。
学際性
異なる学問分野の境界を越えて協働し、新しい知見を生み出すアプローチ。
学際的思考
一つの学問領域の枠を超え、複数の知的伝統・方法論を横断して問題に取り組む思考スタイル。
完
感
環
監
観
還
間
器
奇
希
期
機
帰
規
記
技
擬
義
究
虚
競
共
共同体感覚
他者を仲間として感じ、共同体全体への貢献を喜びとする感覚。アドラーが心理的健康の指標とした概念。
共感
他者の感情や状態を内側から理解・共有する能力。単なる同情(sympathy)とは異なり、相手の視点に立って感じることを含む。認知的共感と情動的共感の二層構造を持つ。
共感の神経科学
他者の感情を理解・共有する能力の神経的基盤。ミラーニューロンが共感の「感じ」を直接生む可能性。
共約不可能性
クーンが論じた、異なるパラダイム間で概念・基準・世界認識が根本的に異なり、単純な優劣比較が不可能な状態。ニュートン力学と相対性理論では「質量」の概念すら異なる。科学の進歩が「真理への累積的接近」ではないことを示唆する。
共通祖先
現存するすべての人類(あるいは特定の集団)が持つ最も近い共通の祖先。ミトコンドリアDNAや Y染色体の系統解析により、「ミトコンドリア・イヴ」「Y染色体アダム」として議論される。
共進化
複数の種や要素が相互に影響を与え合いながら同時に進化していく過程。
協
境
強
業
均
禁
近
金
句
空
群
形
系
経
計
決
血
権
権力の多元性
政治権力が特定の個人・集団に集中せず、複数の勢力に分散している状態。チェック・アンド・バランスの機能を通じて専制的支配を防ぐ。
権威の原理
専門家や権威者の指示に従う傾向。制服・肩書き・シンボルが権威感を演出する。
権威への服従
ミルグラム実験が示した、権威ある人物の指示があれば通常の人々が他者に重大な苦痛を与えることができるという心理的傾向。状況の力が個人の道徳的判断を凌駕することを示した。
権威主義的パーソナリティ
フロムが分析した性格類型。権威に服従することで自由の重荷から逃れようとする心理的傾向。上位者への盲目的服従と下位者への支配欲が共存する。ファシズムの大衆的基盤を心理学的に説明する概念。
見
元
幻
現
現代人への教え
伝統的な禅の教えを、現代社会を生きる人々の課題や悩みに応用可能な形で提示すること。
現在バイアス
将来の報酬より現在の報酬を不釣り合いに高く評価する傾向。遠い将来については合理的に計画できても、直近の誘惑には抵抗できないという時間的不整合を生む。
現存在
ハイデガーが「存在」を問いうる人間的存在を指すために用いた術語。「そこにある存在」という意味。
現象と物自体
カントに由来する区別で、私たちが知覚する「現象」(表象)と、知覚の背後にある「物自体」(認識不可能な実在)とを分ける概念。私たちの認識は常に現象の層に留まるとされる。
現象学
意識に現れる現象をそのままの姿で記述・分析する哲学的方法論。フッサールが創始し、ハイデガー、メルロ=ポンティらに継承された。「物自体」ではなく「意識に現れる仕方」を問う。
言
言語の再帰性
チョムスキーが人間言語の定義的特徴とした構造的性質。文の中に無限に文を埋め込める能力(「彼は[彼女が[彼が知っている]と思っている]と言った」)。エヴェレットはピダハン語にこの構造がないと主張し普遍文法論争を引き起こした。
言語の存在様態
古典主義時代には表象を透明に伝える道具にすぎなかった言語が、近代になると文献学という独自の対象・歴史を持つ実定的な学の対象へと変わり、さらに文学において言語そのものの存在感が回帰するという変化。
言語の進化
ヒト固有の言語能力がどのように進化したかを問う問題。言語はミームの高精度な伝達を可能にする装置であり、ミームと遺伝子の共進化の産物として捉えられる。記号・構文・発音などの複雑な能力の起源に関わる。
言語使用の創造性
人間の言語使用が、有限個の規則と語彙から、一度も発話・聴取されたことのない文を無限に生成し理解できるという性質。言語能力の説明が対処すべき中心的な事実とされる。
言語本能
ピンカーが提唱した概念。言語能力は文化的発明ではなく、自然選択によって進化した生物学的適応であり、人間はクモが巣を張るように言語を獲得する生得的能力を持つ。
言語能力
母語話者が有限の言語経験から獲得し、聞いたことのない文についても文法性を判断し新しい文を産出・理解できるようにする、内在化された規則の体系。実際の発話行動である言語運用とは区別される。
言語記号の恣意性
ソシュールが提唱した言語記号の根本原理。語(シニフィアン)と意味(シニフィエ)の結びつきは自然的・必然的なものではなく、社会的慣習によって成立するという考え方。同じ対象を異なる言語が異なる音で表すことがその証拠とされる。
言説
フーコーの概念に基づき、特定の対象についての「語り方」を規定する規則・制度・実践の総体。言説は単に現実を反映するのでなく、現実を構築・規定する権力を持つ。
個
互
後
光
公
公共圏
私的領域とシステム(国家・経済)の間に位置し、市民が言語的討議によって公共的意見を形成する社会空間。ハーバーマスの初期著作『公共性の構造転換』で詳論された概念。
公定ナショナリズム
民衆的なナショナリズムの高まりに対して、既存の王朝・帝国が上からナショナリズムを動員・制度化することで権力を維持しようとする戦略。ロシア、日本、英国などで見られた現象。
公平な観察者
スミスの道徳感情論の核心概念。道徳的判断は、自分の行為を想像上の「公平な観察者」がどう評価するかを内省することで下される。良心・自己批判のメカニズムを社会的想像力として説明した。
公案
禅師から修行者に与えられる論理的思考では解けない問い・事例。概念的思考を超えた直接の体験的理解を促すための修行手段。
公開鍵暗号
暗号化と復号に異なる鍵を使う方式。公開鍵で暗号化し、秘密鍵で復号する。インターネットセキュリティの基盤。
功
厚
好
孔
幸
構
考
合
国
根
差
差異それ自体
差異を同一性・類似・対立・類比といった表象の枠組みに従属させず、それ自体として思考しようとする概念。プラトン以来の哲学が「差異は同一なものの差異である」と前提してきたことへの根本的な批判。
差異と反復
ドゥルーズが展開した、同一性ではなく差異が存在の根源であるという哲学的テーゼ。
差異の差異
情報とは「差異を生む差異」であるというベイトソンの根本定義。物理的な力ではなく、識別可能な違いが意味を持つという認識論的原理。情報は世界の物理的性質ではなく、観察者との関係において生じる。
差異の構築
文化的・民族的差異は自然に存在するのでなく、社会的・歴史的プロセスによって意味づけられ構築されるという考え方。差異の強調は特定の権力関係を支える機能を果たす。
坐
再
最
罪
財
作
散
士
市
思
死
資
持
時
自
自己の問題
人生とは他者や外部環境ではなく、自分自身に向き合う問題であるという認識。
自己を忘れること
自己中心的なこだわりや欲望から離れ、自我への執着を手放す実践。仏道修行の本質として、自己の利益や評価を求める心を捨て去ることを指す。
自己を見つめる
外部ではなく自分自身の内面に目を向け、真の自己を探求すること。
自己組織化
外部からの設計や制御なしに、システム内部の相互作用から秩序やパターンが自発的に生まれる現象。複雑系科学の中心概念の一つ。
自己複製
生命が自分自身のコピーを作り出す能力。DNAの複製を通じて実現される生命の基本的特徴。
自己言及
ある命題や体系が、自分自身を対象として言及する構造。「この文は偽である」というような嘘つきのパラドックスが典型例。ゲーデルはこの構造を数論の言語に埋め込むことで不完全性定理を証明した。
自己言及性
システムが自己自身を参照しながら作動する性質。システムの要素が他の要素を産出する循環的なプロセス。
自己調整市場
価格メカニズムだけで資源配分・生産・分配を調整し、外部からの社会的介入を必要としないとされる市場モデル。ポランニーはこれを歴史的に異例な、かつ根本的に不安定なユートピア的構想として批判した。
自己超越
人間の本質は自己中心性にあるのではなく、自己を超えて他者や使命に向かう傾向にあるという考え。
自己革新能力の欠如
組織が自らの失敗から学び、戦略や構造を根本的に変革する能力の欠如。同じ過ちを繰り返す。
自己(セルフ)のミーム的構成
「自己」あるいは「私」という感覚は実体的な主体ではなく、ミームが作り出した幻想であるという見方。脳に宿ったミームの集合体が自己という物語を構成し、それ自体がミームプレックスとして機能する。
自然利子率
経済が完全雇用・潜在成長率と整合的な状態にあるときの実質利子率。ウィクセルが提唱した概念で、実際の市場金利との乖離が景気変動をもたらす。
自然状態
ホッブズが想定した政府以前の状態。「万人の万人に対する闘争」であり、人生は「孤独で、貧しく、不快で、野蛮で、短い」。この不安から逃れるために人々は社会契約を結ぶ。
自然選択
環境への適応度が高い個体がより多く生存・繁殖し、その形質が次世代に伝わることで集団の性質が変化するプロセス。ダーウィンが提唱した進化の根本メカニズム。
自由の重荷
フロムの中心テーゼ。中世的絆から解放された近代人は積極的自由(〜できる)を得たが、帰属感・安全・権威という心理的支えも失った。この実存的孤独が権威主義・破壊性・機械的同調という逃走メカニズムを生む。
自由市場主義
個人の自由と財産権を最大限尊重し、国家の介入を最小化すべきとする政治哲学。ロバート・ノージックが代表的論者。
自由放任主義
国家介入を最小化し、市場の自由な作動に経済を委ねるべきという思想・政策原理。アダム・スミス以降の古典派経済学に根ざし、19世紀イギリスで支配的なイデオロギーとなった。
執
実
写
社
社会の複雑化
バンド、部族、首長制、国家という段階を経て、社会組織が大規模化・階層化していく過程。
社会システム
コミュニケーションを要素として自己産出する社会的なオートポイエーシス・システム。ルーマンによる理論展開。
社会的保護
市場経済の破壊的影響から労働・土地・貨幣(共同体・自然・金融)を守ろうとする社会的諸力の総称。労働立法・関税・中央銀行政策など多様な形態をとる。
社会的合理化
近代社会において宗教的世界観が解体し、様々な行為領域が固有の合理性基準に従って分化していく歴史的過程。ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理』の議論を継承する。
社会的条件付け
個人の行動・価値観・感情反応が、所属する社会集団との相互作用を通じて形成・変化する過程。観察学習・強化・模倣が主要なメカニズム。
社会的構築主義
人種・民族・ジェンダーなどの社会的カテゴリは、所与の自然的事実ではなく、歴史的・社会的プロセスによって構築されたものであるという立場。
社会的統合
個人が社会的集団・共同体・価値体系に結びついている程度。デュルケームはこれが低すぎるとエゴイスティックな自殺が、高すぎると利他的自殺が生じると論じた。社会の凝集力の指標。
社会的証明
他者の行動を「正しい行動」の手がかりとして参照し、自分の行動を調整する心理的傾向。不確実な状況で特に強く働き、集団的な規範形成や流行の創出につながる。
社会規範と市場規範
人間関係は社会的規範(互恵・情け)または市場規範(価格・交換)で動く。両者の混在が問題を起こす。
主
狩
種
収
周
宗
修
終
集
集合的無意識
ユングが提唱した概念。個人の経験を超えて人類全体に共有される深層の無意識層。元型(アーキタイプ)という普遍的心理パターンが格納されており、神話・宗教・夢に普遍的象徴として現れる。
集合的責任
個人が直接関与していない過去の行為(歴史的不正義・先人の業績等)に対しても、共同体の成員として道徳的責任を負うという考え方。
集団思考
凝集性の高い集団において、批判的思考や反対意見が抑制され、誤った合意が形成されてしまう心理的現象。アービング・ジャニスが定式化した概念。
集団遺伝学
集団レベルでの遺伝子頻度の変化・分布・分岐を研究する遺伝学の一分野。自然選択・遺伝的浮動・移住・突然変異が集団の遺伝的多様性を形成する仕組みを扱う。
縦
重
銃
出
純
巡
初
商
小
承
乗
剰
場
情
状
植
食
心
神
親
身
進
人
人工生命
コンピュータやロボットで生命の特性を再現・研究する分野。生命を「実現される」ものとして捉える。
人工知能
人間の知的活動をコンピュータで実現しようとする研究領域。チューリングは「機械は考えられるか」という問いを通じてこの分野の問題設定を初めて明確化した先駆者の一人。
人文諸科学の成立
心理学・社会学・文学/神話研究など「人間」を対象とする学問群が、19世紀に生・労働・言語という実定的な知(生物学・経済学・言語学)の隙間から派生的に成立したとする歴史的分析。
人民主権
政治的権力の正当性の根拠が人民(市民全体)にあるという原理。ルソーの一般意志論から導かれ、代議制民主主義の理論的基盤となった。
人生の智慧
日常生活や人生の様々な局面において、より良く生きるための深い洞察や実践的な知恵。
人間の終焉
「人間」は普遍的な存在ではなく、19世紀初頭の近代的エピステーメーの中で初めて知の対象かつ主体として立ち現れた歴史的に新しい形象であり、エピステーメーが変われば消滅しうるとする主張。
人間原理
宇宙の性質が生命・知性の存在を許す条件を持つのは、そうでなければ観測者が存在しないという論理的必然性から説明できるという原理。弱い人間原理と強い人間原理がある。
人間至上主義
人間の経験と欲望を意味と権威の源泉とする現代の支配的宗教。自由主義・社会主義・進化論的人間至上主義に分かれる。
水
数
数学と人間性
純粋な論理の体系である数学が、人間の感情・記憶・関係性と交差する豊かな場。
数学の不条理な有効性
ユージン・ウィグナーが1960年に提起した問い。純粋に抽象的な数学が物理現象を驚くほど正確に記述できる理由が説明できないという謎。
数学の美しさ
数学的証明や結果が持つ簡潔さ・必然性・意外性から感じられる美的な価値。
数学的プラトニズム
数学的対象(数・集合・構造など)は人間の精神から独立して実在するという哲学的立場。ゲーデル自身が支持したとされ、「証明できないが真な命題」の存在が形式体系の外側に数学的真理の世界を想定する根拠として解釈される。
数学的宇宙仮説
宇宙の究極の実在は数学的構造そのものであるという仮説。物理法則が数学で記述できるのではなく、宇宙自体が数学的オブジェクトであるという主張。テグマークが提唱した。
数学的帰納法
命題がn=1で成立し、nで成立すればn+1でも成立することを示す証明手法。自然数全体への証明法。
数学的直感
厳密な証明に先立って「これは正しいはずだ」と感じる数学者の内的感覚。しばしば発見の原動力となるが、論理的証明によって裏付けられる必要がある。
数学的直感と厳密性
数学者が持つ非形式的な見通しと、それを厳密な証明に変換する作業の間の創造的緊張。
数学的美しさ
数学における「美しさ」とは単なる主観的感覚ではなく、構造の深さ・統一性・予想外のつながりが生み出す客観的な質だとする考え方。オイラーの等式はその典型例とされる。
数学的証明
数学的命題が真であることを公理から出発して論理的に示す手続き。絶対的確実性を持つ。
世
制
性
成
星
正
生
生体濃縮
化学物質が食物連鎖の上位に行くほど高濃度に蓄積される現象。DDT被害の主要メカニズム。
生命とは何か
生命の本質を問う根源的な問い。シュレーディンガーの同名の著書でも扱われた科学哲学的テーマ。
生命の定義
生命体を非生命から区別する特徴を概念化しようとする試み。自己複製・代謝・恒常性・進化可能性などが候補として挙げられるが、普遍的な定義はなお議論中。
生命史の偶然性
グールドが主張した、生命の歴史は適応の必然的帰結ではなく、偶然の事象の積み重ねであるという認識。「テープを巻き戻せば」まったく別の生物圏が生まれたはずという思考実験で示した。
生態系の連鎖
捕食被食関係を通じて生物が連なるシステム。一部への汚染が全体に連鎖的な影響を与える。
生成文法
有限個の規則から出発し、その言語における文法的な文をすべて過不足なく生成する装置として文法を捉える言語理論。人間の潜在的な言語知識を明示的な規則体系としてモデル化しようとする点に特徴がある。
生成関数
数列をべき級数の係数として表現することで、数列の性質を解析的に扱う手法。
生権力
生命そのもの——人間の身体・生殖・健康・寿命——を対象とした近代的な権力形態。個人の身体への規律と、人口全体への管理という二つの極から構成される。
生涯実践
人生を通じて一貫して修行や実践を続けること。
生物の主体性
生物を外部刺激にただ反応するだけの機械ではなく、自らの環世界を能動的に構築し対象に意味を与える「主体」として捉える見方。環世界論全体を支える基本的な生物観にあたる。
生物学的限界の超越
遺伝子工学、サイボーグ工学、非有機的生命工学による人類の生物学的制約からの解放。
生物記号論
生物の知覚と行動を、対象が担う標識や意味の関係として記号論的に読み解こうとする学問領域。ユクスキュルはその先駆者の一人として位置づけられている。
精
誠
責
摂
説
絶
専
選
前
善
漸
全
禅
疎
素
素因数分解
ある整数を素数の積として表す操作。小さな整数では容易だが、桁数が増えると計算量が爆発的に増大する(計算困難性)。この非対称性が現代暗号の安全性根拠として利用される。
素数
1とその数自身以外に約数を持たない2以上の自然数。すべての自然数は素数の積に一意に分解される(素因数分解の一意性)。無限に存在するがその分布に規則性はなく、その謎が数論の中心問題となっている。
素数の分布
自然数の列における素数の出現パターン。平均的には素数定理で予測できるが、局所的には不規則であり、双子素数・等差数列中の素数など多くの未解決問題を含む。
素数定理
x以下の素数の個数π(x)がx/ln(x)に漸近するという定理。1896年にアダマールとド・ラ・ヴァレー・プーサンが独立に証明した。素数の「平均的な密度」を与えるが、個々の素数の位置は予測しない。
組
創
想
曹
相
贈
俗
属
損
他
多
楕
対
代
大
第
只
脱
短
知
知と権力
知識の生産は権力関係から中立ではなく、権力が知を形成し、知が権力を強化するという相互規定の関係。フーコーが定式化し、批判理論の基礎概念となっている。
知的発酵
アイデアをすぐに処理せず、時間をかけて寝かせることで質の高い思考が生まれるプロセス。
知覚の閾値
刺激が意識に上るかどうかを決める境界値。閾値以下では情報処理は起きるが意識されない。
知覚世界と作用世界
環世界を構成する二つの側面。知覚世界は生物が感覚器官で捉える知覚標識の総体、作用世界は運動器官を通じて対象に働きかける作用標識の総体を指し、両者が一体となって一つの環世界をなす。
知識の社会的責任
知識人が持つ、自らの知識と発言力を社会問題に対して使う責任と義務。
地
秩
茶
抽
超
沈
低
停
帝
適
等
統
逃
動
同
導
道
道具的存在と手許存在
使用中の道具は透明な手許存在として現れ、壊れたとき初めて眼前存在として対象化される。
道具的理性
目的そのものへの問いを括弧に入れ、効率・手段・管理の最大化のみを追求する近代的理性の様式。フランクフルト学派が批判した啓蒙の病理。
道徳と経済の両立
孔子の倫理的原則と実業・利益追求を対立させずに統合するという渋沢の中心思想。
道徳的運
個人の成功や失敗が、自ら選択していない偶然的要素(生まれ・才能・環境)にどれだけ依存しているかという問題。道徳的責任の根拠を問い直す概念。
道心
仏道を求め、悟りへ向かおうとする心。単なる知的関心ではなく、生死の問題に真正面から向き合う切実な求道の動機を指す。
徳
独
二
二人ゼロ和ゲームの決定可能性
二人ゼロ和の有限ゲームには、完全情報のもとで必ず最適戦略(または混合戦略上の均衡)が存在し、どちらのプレイヤーが「勝てる」かが原理的に決定されるという性質。
二重思考
オーウェルの1984年で提示された概念。相互に矛盾する二つの信念を同時に持ち、それが矛盾することを知りながら両方を信じること。全体主義的プロパガンダが要求する精神的自己欺瞞。
二重運動
市場経済の拡張に対して、社会が自己防衛のために反対方向の運動を起こすという歴史的メカニズム。自由放任主義的な市場拡大と、それへの社会的保護を求める対抗運動が常に対になって現れる。ポランニーの中心的テーゼ。
二項対立
世界を二つの相互排他的な範疇に分割する思考構造。一方が優位・規範として設定され、他方は劣位・逸脱として定義される非対称な関係を生む。
日
任
認
認知
生命システムが環境との相互作用を通じて有効な行為を生成するプロセス。マトゥラーナとヴァレラは「生きることは認知すること」と定義した。
認知バイアス
人間の思考・判断において系統的・反復的に生じる非合理なパターン。進化や情報処理の制約から生まれた精神的ショートカット(ヒューリスティック)の副産物として生じることが多い。
認知革命
約7万年前にホモ・サピエンスに起きた認知能力の飛躍的向上。虚構を語る能力を獲得し、柔軟な言語を使えるようになった。
認識論的アナーキズム
ファイヤアーベントが主張した科学方法論の立場。すべての方法論的規則には例外があり、科学の発展は規則への服従ではなく規則違反によって可能になることがある。「何でもあり」が唯一の普遍的方法論原理。
認識論的断絶
ある時代の知の枠組みから別の枠組みへの移行が、連続的な進歩の蓄積ではなく、不連続で急激な「断絶」として生じるという歴史観。バシュラールら科学史の不連続性の議論を背景に、フーコーが知の変遷の分析に用いた。
熱
農
破
配
反
汎
悲
批
比
肥
被
非
微
標
表
病
頻
不
不完全性定理
クルト・ゲーデルが1931年に証明した定理。十分に強い形式体系においては、その体系内で証明も反証もできない真な命題が存在し(第一定理)、体系自身の無矛盾性をその体系内で証明できない(第二定理)ことを示す。数理論理学における20世紀最大の成果のひとつとされる。
不条理
人間が意味を求める欲求と、宇宙が意味を持たないという事実との間の衝突。カフカ、カミュ、サルトルらが探求したテーマ。説明も理由もなく変身するグレゴール・ザムザの状況がその典型。
不死の追求
テクノロジーによって死そのものを克服しようとする人類の新たな野望。
不確実性
確率分布すら定めることができない、予測不可能なリスク。単なる確率的リスクとは異なり、保険や計算で対処できない根本的な将来の不知を指す。
普
負
武
複
複素解析
複素数を変数とする関数の微分・積分を研究する数学の分野。実数解析では得られない強力な定理(コーシーの積分定理など)を持ち、数論・物理・工学に広く応用される。
複製子
コピーされることで増殖し、変異と選択を経て進化する情報の基本単位。遺伝子が生物進化における複製子であるのに対し、ミームは文化進化における複製子として位置づけられる。複製の高精度・多産性・長寿性が成功の条件。
複製技術と芸術
バーガーがベンヤミンに触発されて論じた、写真・印刷技術による芸術作品の複製が「アウラ」(唯一性・オリジナル性)を解体し、芸術の社会的意味を変容させるプロセス。
複雑系
多数の相互作用する要素からなり、還元主義的な分析では捉えられない全体的な振る舞いを示すシステム。部分の総和以上の特性(創発)が現れる。
複雑適応系
多数の構成要素が相互作用し、環境に適応しながら進化・学習する動的なシステム。経済、生態系、免疫系などが該当する。
仏
物
分
文
文化と権力
文化的生産物(文学・芸術・学術)が政治的・社会的権力関係を反映し、それを再生産・強化する機能を持つという認識。グラムシのヘゲモニー概念とも親和性が高い。
文化の神経的伝達
身振り・儀式・技術の模倣伝達がミラーニューロンによって可能になるという文化進化の視点。
文化産業
アドルノ&ホルクハイマーが提唱し、文化的生産物が大量生産・標準化され市場原理に従属する構造を指す。文化が自律性を失い消費財化される現象。
文化的伝達
知識・行動・価値観などの情報が個人間・世代間で伝わるメカニズム。生物学的遺伝とは独立した情報の継承経路であり、模倣・言語・教育などを通じて行われる。進化生物学と認知科学の交差点に位置する概念。
文化的進化
生物学的進化とは独立に、技術・慣習・言語・価値観などの文化要素が世代間で伝達・変容・選択される過程。遺伝子と文化の共進化という視点も重要。
文化相対主義
各文化はそれ自体の論理と価値体系を持ち、外部の普遍的基準で一方的に評価すべきでないという立場。文化間の意味の翻訳可能性も問う。
文字の発明
言語を視覚的記号で記録する技術。情報の蓄積と伝達を飛躍的に向上させる。
文法の単純性
同一の言語データに適合しうる複数の文法が存在する場合、より少ない規則やより単純な規則体系で記述できる文法を理論的に優れたものとして選択する基準。文法理論の選択を客観化する試みである。
文法性と意味の独立
ある文が文法的に適格であるかどうかは、その文が意味をなすかどうかや実際に発話された頻度とは独立に判定されうるという考え方。統語構造の研究を意味論から切り離す論拠として用いられる。
兵
平
変
返
保
包
放
方
法
萌
忘
本
魔
万
無
無常
すべての存在・現象は絶えず変化し、永続するものは何もないという仏教・日本思想の根本認識。一瞬の美しさを際立たせる哲学的基盤となる。
無意識の計算
意識に上らない情報処理。算術・言語・感情の多くは無意識で処理される。
無所得
何かを得ようとする欲求を持たない心の在り方。修行において悟りや功徳を獲得しようとする打算的態度を離れ、ただ修行そのものに徹することを指す。
無矛盾性
形式体系において、ある命題とその否定の両方が証明されることがない性質。体系が矛盾を含むとすべての命題が証明可能になる(爆発律)ため、無矛盾性は体系の信頼性の最低条件とされる。ゲーデルの第二不完全性定理は、体系自身の無矛盾性をその体系内で証明できないことを示す。
無知のヴェール
ロールズが提案した思考実験。自分の社会的地位・才能・価値観を知らない「原初状態」から社会の基本ルールを選ぶなら何を選ぶか、という公正な判断の装置。
無限
限界のない量・集合・系列という概念。ボルヘスは無限図書館・無限の砂・円環など文学的比喩として探求し、数学では集合論によって多様な無限の「大きさ」が存在することが示されている。
名
明
迷
模
目
問
輸
優
友
幽
有
予
余
抑
欲
利
利他行動と協力の進化
自己犠牲的に見える行動がいかにして進化的に維持されるかを問う問題。血縁選択・互恵的利他主義・グループ選択などの説明が競合する。ミーム理論は文化的規範がこれらを補強または代替する経路を示す。
利己的な複製子
複製子は自らの増殖・存続を「目的」とするかのように振る舞うという比喩的概念。遺伝子・ミームともに「自らの利益」のために宿主や環境を利用する。リチャード・ドーキンスが提唱した枠組みの核心。
利己的な遺伝子
生物は遺伝子の乗り物であり、遺伝子が自己複製を最大化するために生物の行動や形態を制御しているという考え方。進化の単位は個体ではなく遺伝子である。
利用可能性ヒューリスティック
出来事の確率や頻度を、それがどれだけ頭に浮かびやすいか(想起しやすさ)によって判断するヒューリスティック。印象的な出来事は過大評価されやすい。
流
量
量子もつれ
2つ以上の量子系が空間的に離れていても互いの状態が相関し、一方を観測すると他方の状態が即座に決まる量子力学的現象。古典物理学には対応物がない。
量子力学の多世界解釈
量子力学における測定の際、波束の収縮は起きず宇宙が分岐して全ての可能性が並行して実現するという解釈。ヒュー・エヴェレットが1957年に提唱。
量子暗号
量子力学の原理(測定による状態変化・量子複製不可能定理)を利用して、盗聴を原理的に検出可能な鍵配送を実現する技術。BB84プロトコルが代表例。
量子生物学
量子力学の効果が生体内の化学・生物学的プロセスに関与しているという研究分野。古典物理学では説明しきれない生命現象を量子力学で解き明かそうとする。