タニヤマ・志村予想
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この概念を本でたどる
『フェルマーの最終定理』で「タニヤマ・志村予想」を読む
サイモン・シン
ケン・リベットがフェルマー定理をタニヤマ・志村予想の帰結として示したことで、証明の方向が定まった。
この本とのつながりを見るフェルマーが本の余白に残した整数の問題は、整数だけを見つめていても解けなかった。証明への橋になったのは、三百年以上あとに日本で育った、楕円曲線とモジュラー形式を結ぶ予想だった。
別々の棚にあった二つの数学
楕円曲線は、方程式で表される曲線を手がかりに有理数や整数の性質を調べる。一方、モジュラー形式は複素解析の世界に現れる、強い対称性を備えた関数だ。見た目も育った分野も違う。
1950年代、谷山豊と志村五郎の仕事から「有理数体上の楕円曲線はモジュラー形式に対応する」という予想が育った。のちに精密化され、現在はモジュラー性定理と呼ばれる。二つの対象が似ているという話ではない。片方について得た情報を、もう片方の言葉へ移せるという橋の主張である。
反例があるなら、奇妙な曲線ができる
この橋をフェルマーの最終定理へ向けたのは、別の連鎖だった。ゲルハルト・フライは、もしフェルマーの方程式に反例があるなら、その数から特別な楕円曲線を作れると指摘した。ジャン=ピエール・セールは、その曲線がモジュラーではないはずだと予想し、ケン・リベットがその予想を証明した。
反例から作られる曲線は「モジュラーではない」はずだった。ところがタニヤマ・志村予想が正しければ、楕円曲線はモジュラーでなければならない。両方は同時に成立しない。つまり、必要な範囲で楕円曲線のモジュラー性を示せれば、フェルマーの最終定理も従う。
ワイルズが証明した範囲
アンドリュー・ワイルズが挑んだのは、この「必要な範囲」だった。1993年に発表した証明には欠陥が見つかったが、リチャード・テイラーとともに修復し、有理数体上の半安定楕円曲線はモジュラーであることを証明した。フライの曲線は半安定なので、これでフェルマーの最終定理には届く。
ただし、ワイルズ一人がすべての楕円曲線についてモジュラー性定理を証明したわけではない。全体はその後も拡張され、2001年にクリストフ・ブルイユ、ブライアン・コンラッド、フレッド・ダイアモンド、リチャード・テイラーが有理数体上の全楕円曲線について証明した。ひとつの英雄譚に畳むより、橋を架け継いだ仕事として読む方が、この定理の姿に近い。
三冊で橋の向こうまで読む
最初の一冊には、サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』がある。フライ、リベット、ワイルズへ続く証明史を、人が一つの問いに取りつかれる物語として追える。
次にマーカス・デュ・ソートイの『素数の音楽』へ渡ると、同じ出来事が素数と数論の長い歴史の中へ置き直される。フェルマーの問題だけを解いた技法ではなく、遠い分野が深部でつながる一例として見えてくる。
三冊目は、エドワード・フレンケルの『数学の大統一に挑む』だ。ラングランズ・プログラムという、数論・幾何・表現論の間にさらに大きな翻訳網を探す構想から、この橋を見直せる。フェルマーの余白から始めた読書が、最後には「数学の別々の言語はどこまで翻訳できるのか」という棚へ着く。
参考にした資料
American Mathematical Society, Notices 2017
この概念を扱う本
概念ネットワーク
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この概念を扱う本(3冊)
サイモン・シン
ケン・リベットがフェルマー定理をタニヤマ・志村予想の帰結として示したことで、証明の方向が定まった。

エドワード・フレンケル
本書は、ラングランズ・プログラムがめざす数学の架け橋を背景に、谷山・志村予想の証明がフェルマーの最終定理につながった経路を紹介し、異なる数学の言語が翻訳される一例として位置づける。