人文諸科学の成立
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この概念を本でたどる
『言葉と物』で「人文諸科学の成立」を読む
ミシェル・フーコー(渡辺一民 / 佐々木明訳)
本書は人文諸科学が自然科学のような確固たる基礎を持たず、機能と規範、葛藤と規則、意味と体系という借用された対概念と、無意識という共通の指示対象によって不安定に組み立てられていると診断する。心理学・社会学・文学/神話研究という3領域が具体例として検討される。
この本とのつながりを見る人文諸科学の成立とは、心理学・社会学・文学/神話研究など「人間」を対象とする学問群が、19世紀に生・労働・言語という実定的な知の隙間から派生的に成立したとする歴史的分析である。ミシェル・フーコーは、これらの学が生物学・経済学・言語学と並ぶ独自の基礎を持たず、借用した概念対と無意識という共通の指示対象によって不安定に組み立てられていると診断する。
実定性の三つ組と人間の出現
古典主義時代、博物学・富の分析・一般文法は事物を表象の秩序のもとに並べる学であり、そこに「人間」の居場所はなかったとされる。18世紀末から19世紀初頭にかけてこの布置は崩れ、生物学・経済学・言語学という新たな実定的な知へと置き換わる。生物は有機体としての機能・組織化という独自の深みを、労働は生産と稀少性という独自の歴史を、言語は表象に還元されない体系としての厚みを獲得する(認識論的断絶、エピステーメー)。この転換のただなかで、生き・労働し・語る存在として知の対象でありながら同時に知る主体でもある「人間」という奇妙な二重体が姿を現す。
隙間から生まれた借用概念
人文諸科学は、この三つの実定的な知と並ぶ第四の学として成立したのではなく、その隙間に事後的に形づくられたとフーコーは論じる。心理学は生物学から機能と規範の対を、社会学は経済学から葛藤と規則の対を、文学・神話研究は言語学から意味と体系の対をそれぞれ借用し、自らの対象を組み立てる。文学・神話研究にとって言語は透明な道具ではなく、それ自体が意味と体系を宿す対象として現れる(言語の存在様態、ラング/パロール)。
無意識という共通の指示対象
三領域は借用元も対象も異なりながら、いずれも意識に直接与えられないものへと向かう点で収斂するとされる。精神分析が探る無意識、社会を規定しながら当事者には見えない規則、神話や言語を支える無意識の体系は、いずれもこの共通の指示対象の現れである。それゆえ精神分析と民族学(構造主義的な神話・親族研究を含む)は、人間を安定した主体として確証するのではなく、その限界へと問い返す「反科学」として位置づけられる(構造主義、主体の不在)。
基礎なき学の不安定性
生物学・経済学・言語学が自前の対象と方法を備えるのに対し、人文諸科学は借用した対概念と無意識という間接的な指示対象によってしか自らを支えられない。この基礎の弱さこそが、人文諸科学の際立った不安定さと論争的な性格の理由であるとフーコーは診断する。そしてこの診断は、「人間」がごく近年の知の配置がもたらした発明品にすぎず、いずれ終焉を迎えうるという主張(人間の終焉)へとつながっていく。
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ミシェル・フーコー(渡辺一民 / 佐々木明訳)
本書は人文諸科学が自然科学のような確固たる基礎を持たず、機能と規範、葛藤と規則、意味と体系という借用された対概念と、無意識という共通の指示対象によって不安定に組み立てられていると診断する。心理学・社会学・文学/神話研究という3領域が具体例として検討される。