生成文法
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この概念を本でたどる
『統辞構造論』で「生成文法」を読む
ノーム・チョムスキー(福井直樹 / 辻子美保子訳)
本書は生成文法という研究プログラムそのものを提唱する記念碑的著作であり、文法を『文の集合を生成する装置』として定式化し、句構造規則と変換規則を組み合わせた形式モデルを英語の具体例とともに提示する。
この本とのつながりを見る生成文法とは、有限個の規則から出発し、ある言語において文法的な文をすべて過不足なく作り出す「装置」として文法を捉え直す言語理論である。1957年、ノーム・チョムスキーは『統辞構造論』でこの構想を提示し、以後の言語学の方向を大きく変える研究プログラムとなった。話者が無意識のうちに持つ言語知識を、明示的で有限な規則の体系として記述しようとする点に最大の特徴があり、言語学を人間の心の働きを探る学問として位置づけ直した転換点と評価されている。後の認知科学の成立にも影響を与え、言語学における一種の「革命」の起点としてしばしば語られる。
構造言語学からの転換
1950年代のアメリカ言語学では、レナード・ブルームフィールドに連なる構造言語学(分布主義言語学)が主流で、実際に集められた発話資料を分類・整理することに主眼が置かれ、行動主義心理学の影響も強かった。文法とは、観察された文の集まりから帰納的に取り出す分類の体系だと考えられていた。これに対しチョムスキーは、話者が聞いたことのない文でも文法的かどうかを直観的に判断でき、理論上は無限に多くの文を理解・産出できる点に注目した。この能力を説明するには個々の文を集めるだけでは足りず、文を生み出す規則の体系そのものを明らかにする必要があるという発想が、生成文法の出発点になったとされる。
文法を生成する規則の体系として設計する
チョムスキーはまず、当時有力だった有限状態文法の限界を指摘し、自然言語の文構造がそれだけでは説明しきれないことを示した。そのうえで、より強力な形式装置として句構造規則と変換規則を組み合わせた文法モデルを提示した。単純な核文を基礎に置き、そこに変換操作を加えることで受動文・否定文・疑問文など多様な文型を導き出す仕組みであり、複数ありうる文法記述のうちどれを採用するかを判定する基準として文法の単純性を掲げた点も特徴的である。
意味から独立した文法性
本書はさらに、"Colorless green ideas sleep furiously"(無色の緑の観念が猛烈に眠る)という、意味的には奇妙でも文法的には整った文を例に挙げ、文法的に正しい文と意味的に理解できる文とが必ずしも一致しないことを示した。ここから文法性と意味の独立という論点が提示され、文法を意味や使用状況から切り離して研究できる形式的な体系として扱う統語論の自律性という立場が導かれた。この自律性の主張は、生成文法という研究プログラム全体を支える前提になったとされる。
言語学を超えて広がった射程
生成文法はその後、話者に生得的に備わるとされる言語能力や、有限の手段から無限の文を生み出す言語使用の創造性という論点へと発展していった。規則の体系から文を機械的に導き出す装置という発想は、チューリングマシンに代表される計算理論とも重なり合い、言語学を論理学・情報科学と結びつける結節点になったとされる。理論そのものもチョムスキー自身の手で幾度も改訂され、統率・束縛理論やミニマリスト・プログラムへと姿を変えていったが、規則にもとづいて無限の文を生み出す装置として言語を捉える基本構想は一貫して受け継がれているとされる。
この概念を扱う本
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この概念を扱う本(1冊)
ノーム・チョムスキー(福井直樹 / 辻子美保子訳)
本書は生成文法という研究プログラムそのものを提唱する記念碑的著作であり、文法を『文の集合を生成する装置』として定式化し、句構造規則と変換規則を組み合わせた形式モデルを英語の具体例とともに提示する。