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核文

kernel sentence核文理論基底文

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この概念を本でたどる

統辞構造論』で「核文」を読む

ノーム・チョムスキー(福井直樹 / 辻子美保子訳)

本書では英語の文全体を、基本的な核文とそこから種々の変換によって派生する文とに整理する枠組みが提示され、統語現象の記述に用いられるが、この発想は後の生成文法の理論的展開の中で修正・放棄されていく。

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核文(kernel sentence)とは、義務的な変換規則のみを適用して得られる、単純な能動平叙文からなる文の集合を指す統語論上の概念である。「核文理論」「基底文」とも呼ばれる。受動文・疑問文・否定文など、それ以外のさまざまな文は、この核文に付加的な変換規則を適用することで派生すると考えられた。統辞構造論でノーム・チョムスキーが提示し、初期の生成文法において英語の文全体を整理し記述するための中心的な仕組みとなった。

核文とは何か

チョムスキーの枠組みでは、句構造規則がまず基本的な句構造を生成し、そこに変換規則が適用されて実際の文が作られるとされる。変換規則には必ず適用される義務的なものと、任意に適用される任意的なものの二種類があり、義務的な変換だけを経て得られる単純な能動・平叙・肯定の文の集合が核文と定義された。核文は構造が単純で語順も規則的であるため、複雑な統語現象を記述するための出発点、いわば文法全体の土台として扱われたとされる。

核文という発想の生まれた背景

『統辞構造論』でチョムスキーはまず、単語の並びを確率的に予測する有限状態文法の限界を指摘し、英語の文構造を捉えるには句構造規則が必要だと論じた。しかし句構造規則だけで能動文・受動文・否定文・疑問文のすべてを個別に生成しようとすると、規則の数が膨れ上がるうえ、これらの文同士が持つ体系的な類似性をうまく説明できない。核文と変換規則を組み合わせる方式は、この非効率を解消し、少数の基本規則から多様な文を導く経済的な記述を可能にしたと説明される。

核文から派生する文

受動文・否定文・疑問文、あるいは複数の文が組み合わさった複雑な文は、核文に任意の変換規則を適用することで導かれると説明された。例えば能動の核文である"A boy hit the ball"(男の子がボールを打った)に受動変換を適用すれば、"The ball was hit by a boy"(ボールは男の子に打たれた)という受動文が得られる、という具合である。この枠組みの利点は、能動文と受動文のような文同士の意味的な近さを、共通の核文から派生したという統語的な手続きとして自然に説明できる点にあった。多様な文をすべて個別の規則で生成するのではなく、少数の核文と変換規則の組み合わせに還元する発想は、文法の単純性を追求する動機にもなったとされる。

核文概念のその後

もっとも、核文という発想は『統辞構造論』以降の生成文法の展開の中で長くは維持されなかった。1960年代には、文が核文からの変換の回数が多いほど理解や産出に時間がかかるはずだという心理言語学的な仮説も検証されたが、これを一貫して支持する結果は得られなかったとされる。さらに1965年の『文法理論の諸相』では深層構造と表層構造という区別が導入され、変換規則は核文という限定された文の集合ではなく、より抽象的な深層構造全般に対して適用されるものへと一般化された。核文と非核文を分ける枠組みそのものが理論的な役割を失い、放棄されていったと伝えられる。それでも、単純な基底構造から多様な表現を体系的に導き出すという発想の骨格は、その後の統語論の自律性を重んじる生成文法の理論的な系譜に引き継がれていると見ることができる。

この概念を扱う本

この概念を扱う本(1冊)

統辞構造論
統辞構造論

ノーム・チョムスキー(福井直樹 / 辻子美保子訳)

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本書では英語の文全体を、基本的な核文とそこから種々の変換によって派生する文とに整理する枠組みが提示され、統語現象の記述に用いられるが、この発想は後の生成文法の理論的展開の中で修正・放棄されていく。