Mブレーン理論
「Mブレーン理論」とは
5つの異なる弦理論を統一する11次元の理論。「膜」の上に宇宙が存在する可能性を示す。
別名・関連語としてM-theory、ブレーン宇宙論とも呼ばれる。
『エレガントな宇宙』におけるMブレーン理論
グリーンはM理論を超弦理論の最終的な統合として、並行宇宙の可能性とともに論じた。
「万物の理論」は実証できるのか
Mブレーン理論が物理学者の間で特別な地位を占めるのは、互いに矛盾しているように見えた5つの弦理論を統一するフレームワークを提供したからだ。しかしその地位は諸刃の剣でもある。M理論はプランクスケール(10^-35メートル)での物理現象を扱うため、現在の加速器技術では直接検証できない。また「風景(ランドスケープ)」問題——余剰次元のコンパクト化の方法が10^500通り以上あり、それぞれが異なる物理定数を持つ宇宙に対応する——は、M理論が特定の予測をほとんどできないことを示す。「何でも説明できる理論は何も説明していない」というポパー的な批判は、M理論にとって最も深刻な問いだ。
近い概念とのつながり
Mブレーン理論を理解する上で、関連する概念との比較が助けになる。
- [余剰次元](/concepts/%E4%BD%99%E5%89%B0%E6%AC%A1%E5%85%83)—私たちが知覚できる4次元時空以外に、極めて小さく丸まった空間的次元が存在するという仮説。 - [時空の曲率](/concepts/%E6%99%82%E7%A9%BA%E3%81%AE%E6%9B%B2%E7%8E%87)—重力は力ではなく質量によって時空が曲げられる幾何学的効果として現れるというアインシュタインの洞察。 - [超弦理論](/concepts/%E8%B6%85%E5%BC%A6%E7%90%86%E8%AB%96)—素粒子を点ではなく1次元の振動する弦として扱い、すべての力と物質を統一的に記述しようとする理論。 - [量子もつれ](/concepts/%E9%87%8F%E5%AD%90%E3%82%82%E3%81%A4%E3%82%8C)—離れた粒子の間に古典的因果律を超えた相関が存在する量子力学の現象。
この概念をもっと知りたいなら
Mブレーン理論について深く学ぶには、以下の著作が参考になる。
- [『エレガントな宇宙』](/books/エレガントな宇宙) — ブライアン・グリーン 超弦理論と余剰次元を一般向けに解説。アインシュタインの一般相対性理論と量子力学の統合を目指す弦理論が、宇宙の究極理論になりうるかを探る。...
Mブレーン理論の統一への夢と現実
Mブレーン理論(あるいはM理論)は1990年代中頃、エドワード・ウィッテンによって提唱された。それまで競合していた五つの弦理論が、すべて11次元のM理論の特殊な極限として統一的に理解できるというアイデアは、理論物理学者たちを興奮させた。「M」が何を意味するかについてウィッテン自身は曖昧にしているが、「膜(Membrane)」「神秘(Mystery)」「魔法(Magic)」などの候補が挙げられている。理論の核心は、弦(1次元の振動体)だけでなく、2次元膜(ブレーン)、3次元塊など様々な次元の構造体が理論の基本要素として現れるという点にある。
M理論の魅力は「万物の理論」への期待だが、課題も大きい。理論は11次元時空を仮定するが、なぜ私たちが経験する宇宙が3+1次元(空間3次元+時間1次元)なのかを説明するためには、余剰次元がどのように「コンパクト化」(丸まって小さくなる)するかを記述する必要がある。その記述には「カラビ=ヤウ多様体」と呼ばれる複雑な幾何学的構造が関わるが、そのような多様体は非常に多くの種類が存在する(「10^500種類」ともいわれる)。どれが実際の宇宙に対応するかを決める原理がなければ、理論の予測力は失われてしまう。
Mブレーン理論は余剰次元の概念をもっとも野心的な形で活用する理論的枠組みだ。時空の曲率の一般相対性理論と量子もつれが示す量子力学を統一することがM理論の目標のひとつであり、現代物理学が抱える最大の課題に挑んでいる。思考実験という方法論は、直接実験検証が困難なM理論の探求においても重要な役割を果たしている。
この概念を扱う本
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この概念を扱う本(1冊)
ブライアン・グリーン
グリーンはM理論を超弦理論の最終的な統合として、並行宇宙の可能性とともに論じた。