量子もつれ
「量子もつれ」とは
離れた粒子の間に古典的因果律を超えた相関が存在する量子力学の現象。
別名・関連語としてquantum entanglement、非局所性、量子相関とも呼ばれる。
『エレガントな宇宙』における量子もつれ
グリーンは量子力学の奇妙な特性として量子もつれを解説し、古典的直感との矛盾を示した。
アインシュタインが認めたくなかった現実
アインシュタインは量子もつれを「幽霊のような遠隔作用」と呼び、量子力学の不完全性の証拠として退けようとした。1935年のEPR論文(アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン)は、量子もつれが「隠れた変数」——まだ知られていない決定論的な要素——によって説明できると主張した。しかし1964年、ジョン・ベルは「ベルの不等式」を導き出し、隠れた変数理論が満たすべき数学的条件を特定した。1980年代以降のアスペらの実験は、現実がベルの不等式に違反することを示した。量子もつれは「説明待ちの謎」ではなく、局所的な隠れた変数で記述できない自然の根本的な性質であることが実証された。
近い概念とのつながり
量子もつれを理解する上で、関連する概念との比較が助けになる。
- [Mブレーン理論](/concepts/M%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%B3%E7%90%86%E8%AB%96)—5つの異なる弦理論を統一する11次元の理論。「膜」の上に宇宙が存在する可能性を示す。 - [余剰次元](/concepts/%E4%BD%99%E5%89%B0%E6%AC%A1%E5%85%83)—私たちが知覚できる4次元時空以外に、極めて小さく丸まった空間的次元が存在するという仮説。 - [時空の曲率](/concepts/%E6%99%82%E7%A9%BA%E3%81%AE%E6%9B%B2%E7%8E%87)—重力は力ではなく質量によって時空が曲げられる幾何学的効果として現れるというアインシュタインの洞察。 - [超弦理論](/concepts/%E8%B6%85%E5%BC%A6%E7%90%86%E8%AB%96)—素粒子を点ではなく1次元の振動する弦として扱い、すべての力と物質を統一的に記述しようとする理論。
この概念をもっと知りたいなら
量子もつれについて深く学ぶには、以下の著作が参考になる。
- [『エレガントな宇宙』](/books/エレガントな宇宙) — ブライアン・グリーン 超弦理論と余剰次元を一般向けに解説。アインシュタインの一般相対性理論と量子力学の統合を目指す弦理論が、宇宙の究極理論になりうるかを探る。...
量子もつれは「超光速通信」を可能にするか
量子もつれに関して最もよく見られる誤解は、もつれた粒子間での「超光速通信」が可能だという思い込みだ。アインシュタインが「幽霊のような遠隔作用」と呼んで不快感を示した現象であるにもかかわらず、実際には情報の超光速伝達は不可能だ。もつれた粒子の一方を観測すると他方の状態が瞬時に「決まる」ことは本当だが、どちらの結果が出るかは本質的にランダムであり、観測者がその結果を制御することはできない。通信には制御可能な情報が必要であり、量子もつれによる相関はその条件を満たさない。
量子もつれが革命的な技術を生む可能性があるのは通信ではなく計算と暗号の分野だ。量子コンピュータは量子もつれと重ね合わせを利用して、古典コンピュータでは困難な計算を効率的に解くことができる可能性がある。量子鍵配送(QKD)は量子もつれや量子力学の性質を利用して、物理的に盗聴が検出できる通信路を実現する技術だ。量子もつれは「量子インターネット」の基盤技術として研究が進んでいる。
量子もつれは時空の曲率と深い理論的関係があると考える研究者もいる。「ER=EPR」仮説は、もつれた粒子がアインシュタイン-ローゼン橋(ワームホール)によって結ばれているという大胆な提案だ。余剰次元の文脈では、量子もつれが高次元空間での局所的な関係を3次元空間に投影した現象として解釈する可能性もある。量子暗号は量子もつれの性質を実際の暗号技術に応用した最も成熟した量子技術分野のひとつだ。
この概念を扱う本
概念ネットワーク
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この概念を扱う本(2冊)
ブライアン・グリーン
グリーンは量子力学の奇妙な特性として量子もつれを解説し、古典的直感との矛盾を示した。
ジム・アル=ハリリ
光合成において励起エネルギーが複数の経路を「同時に」探索しながら効率良く反応中心に伝達される仕組みの説明として取り上げられ、生体内でのもつれの役割を検討する。