しっぺ返し戦略
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この概念を本でたどる
『つきあい方の科学——バクテリアから国際関係まで』で「しっぺ返し戦略」を読む
ロバート・アクセルロッド(松田裕之訳)
最初は協力し、以後は相手の直前の手を返す。二回のコンピュータ大会で平均得点首位になった単純な戦略を、将来の再会やノイズという条件つきで読む。
この本とのつながりを見る二度の大会で首位になったのは、相手を出し抜く精密な計算ではなく、一手目に協力する短い規則だった。『つきあい方の科学』で出会うTIT FOR TATの驚きは、報復の鋭さより、関係をもう一度協力へ戻せる短さにある。
手順は二つしかない
一手目は協力する。二手目以降は、相手が直前に協力したなら協力し、裏切ったなら裏切る。長い記憶も、相手の性格の推測も使わない。相手の最後の一手だけを写す。
このためTFTは先に裏切らないが、無条件に相手を信じ続ける戦略でもない。裏切りを受ければ次の手で応じる。ただし応報は一回で固定されない。相手が協力へ戻れば、その次にはTFTも協力へ戻る。1981年の論文は、大会での頑健性を、先制的に裏切らないこと、裏切りに反応すること、一度の応報後に協力へ戻れることの三点から説明した。
二度の首位が示した範囲
最初のコンピュータ大会では、14の応募戦略と無作為戦略が、200手の総当たりで競った。TFTは提出戦略のなかで最高の平均得点を得た。結果を知らせたうえで行われた第二回には六か国から62戦略が集まり、TFTが再び首位になった。
ここで測られたのは、一対一で相手を毎回打ち負かす力ではなく、異なる相手と繰り返し対戦したときの平均得点である。「二度勝った」は重要だが、「あらゆる環境で最適」と同じではない。大会の利得、ゲームの長さ、参加した戦略の顔ぶれを離れれば、同じ順位は保証されない。
強さには三つの関門がある
TFTを協力の進化へ置くと、強さを三つに分けられる。非協力者ばかりの場で最初の足場を得られるか。多様な戦略のなかで得点を残せるか。広がったあとに別戦略の侵入へ耐えられるか。大会が主に見せたのは二番目の頑健性である。
三番目の安定性について、1981年のモデルは、同じ相手とまた会う確率が十分高く、所定の利得関係が成り立つとき、成立したTFTがまれな単一の変異戦略に侵入されにくいことを示した。一番目には別の条件が要る。非協力が多数の場では、協力者どうしが出会える小集団などが足場になる。TFT一体を置けば非協力集団を征服する、という筋書きではない。
誤解が一手あるだけで、鏡は曇る
相手の協力を裏切りと見誤ると、厳密なTFTどうしは応報を交互に返しかねない。1988年のレビューは、小さなノイズには少し寛大な応答が役立ちうる一方、ノイズが大きい場で寛大さを増せば利用される可能性もあると整理した。人数、選択肢、利得、集団構造、複数の変異戦略でも結論は変わる。したがってTFTを無条件の進化的に安定な戦略とは呼べない。
互恵的利他主義も同義語ではない。トリヴァースの理論は、非血縁者間の利他行動が進化する条件と、欺き手を抑える心理・行動まで扱う。TFTは、互恵に基づく協力を反復ゲームで調べる一つの戦略である。
しっぺ返しから持ち帰るべきなのは、報復の格言ではない。先に協力できること、ただ乗りに応じられること、そして相手が戻った一手を見逃さないこと。その三つが働くほど「次も会う」場になっているかを問うことである。
参照した資料
- Axelrod本人による研究史と大会の要約 - Axelrod & Hamilton, The Evolution of Cooperation(1981) - Axelrod & Dion, The Further Evolution of Cooperation(1988)
概念ネットワーク
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この概念を扱う本(3冊)
ロバート・アクセルロッド(松田裕之訳)
最初は協力し、以後は相手の直前の手を返す。二回のコンピュータ大会で平均得点首位になった単純な戦略を、将来の再会やノイズという条件つきで読む。
リチャード・ドーキンス
血縁関係のない個体どうしで協力が成り立つ理由として論じられる戦略。まず協力し、裏切られた分だけ裏切り返すという単純さが、繰り返しのゲームでは驚くほど強い——その意外さを詳しく追う。
M・ミッチェル・ワールドロップ
適応と創発を追う人物群像の傍らで、繰り返し囚人のジレンマのトーナメントと、最も単純な戦略が勝ったという結果が顔を出す。協調の起源が複雑系の問題として引き取られる場面。