知脈

協力の進化

evolution of cooperation協調行動の進化evolutionary game theory

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この概念を本でたどる

『つきあい方の科学——バクテリアから国際関係まで』で「協力の進化」を読む

ロバート・アクセルロッド(松田裕之訳)

協力は善いという結論から始めず、非協力が優勢な場での最初の足場、異なる戦略に混じったときの頑健性、成立後の安定性を分けて問う。本書全体の背骨。

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遺伝子から利他的行動を見る本と、人の網から協力を見る本。その二冊をつないだのは、「次もこの相手に会うか」という一つの条件だった。『利己的な遺伝子』と『つながり——社会的ネットワークの驚くべき力』のあいだに、二者の反復を扱う本を置いてみる。

協力を三つの時制に分ける

『つきあい方の科学』で協力の進化を考えるとき、ロバート・アクセルロッドとウィリアム・ハミルトンは問題を三つに分けた。非協力が優勢な場で、協力はどう足場を得るのか。さまざまな戦略が混じる場で、どう生き残るのか。いったん広がったあと、別の戦略の侵入にどう耐えるのか。順に、最初の生存可能性、頑健性、安定性の問いである。

この分け方は、「協力する個体が存在する」ことと「協力が広がる」ことを同じにしない。一回限りの囚人のジレンマでは、相手が何をしても裏切るほうが個人の利得は高い。双方がそうすると共倒れに近い悪い結果になるのに、善意だけでは抜けられない。そこでモデルに入るのが、同じ相手との反復である。

最初の足場は、勝利とは別に要る

無条件に裏切る戦略が大半の集団では、それ自体が安定している。協力する戦略を一つ置くだけで、ただちに置き換えられるわけではない。1981年の分析は、協力者どうしがある割合で出会える小さな集まりや、血縁淘汰による近縁性が、互恵的協力の入口になりうるとした。足場を得たあとに初めて、異なる戦略のなかでの競争を問える。

二回のコンピュータ大会では、しっぺ返し戦略が提出された戦略群のなかで最高の平均得点を得た。最初は協力し、以後は相手の直前の手を返す。先に裏切らず、裏切りには応じ、相手が戻ればこちらも戻る。この振る舞いが、互恵に応じる相手とは得点を積み、ただ乗りには応報する形になった。

「勝った」と「いつでも安定」は違う

大会結果、混合環境での頑健性、進化的に安定な戦略であることは別の主張だ。1981年のモデルでは、将来また相互作用する確率が十分高いなどの条件のもと、成立したTFTはまれな単一の変異戦略の侵入に耐えうると示された。しかし無条件の最適性ではない。1988年のレビューは、人数、利得、ノイズ、集団動態・構造、複数の変異戦略を入れると、安定性の結論が精緻化されることを整理している。

互恵的利他主義とも境界を引いておきたい。トリヴァースの1971年の理論は、非血縁者間の利他性、欺き手への選択、人間の感情や判断を含む広い進化的説明である。TFTは、互恵という接点をもつ一つの形式的戦略であって、その理論全体の別名ではない。

三冊で、問いの縮尺を動かす

『利己的な遺伝子』は、利他的に見える行動が自然選択とどう両立するかを遺伝子の視点から開く。『つきあい方の科学』は視野を二者へ寄せ、反復、記憶、応答、将来の見通しという条件表を置く。『つながり』は、二者を孤立した組ではなく社会的ネットワークの一部として見る。

この三冊は、同じ答えを反復してはいない。選択の単位、相互作用の履歴、関係の構造という異なる窓を持つ。だから順に読む価値がある。協力の進化とは、善人がなぜ生まれたかだけを問う棚ではない。協力が始まる場所、残れる相手、壊れたあと戻れる時間を見分ける棚である。

参照した資料

- Axelrod & Hamilton, The Evolution of Cooperation(1981) - Axelrod & Dion, The Further Evolution of Cooperation(1988) - Trivers, The Evolution of Reciprocal Altruism(1971)

概念ネットワーク

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この概念を扱う本(2冊)

つきあい方の科学——バクテリアから国際関係まで
つきあい方の科学——バクテリアから国際関係まで

ロバート・アクセルロッド(松田裕之訳)

98%

協力は善いという結論から始めず、非協力が優勢な場での最初の足場、異なる戦略に混じったときの頑健性、成立後の安定性を分けて問う。本書全体の背骨。

📚
つながり——社会的ネットワークの驚くべき力

ニコラス・クリスタキス, ジェームズ・ファウラー

75%

社会的ネットワークの形と、人びとの協力関係がどう結びつくかを扱う。二者の反復を問う『つきあい方の科学』から、関係の網へ視野を広げる一冊。