共感の時代へ
フランス・ドゥ・ヴァール
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概要
霊長類の共感と社会行動の研究。共感、共感の神経科学、神経可塑性、互恵的利他主義、社会的条件付け、他者の視点から見る。
キー概念(12件)
本書の中心テーマ。ドゥ・ヴァールは共感を人間特有のものではなく、霊長類を含む多くの動物に見られる進化的産物として論じる。チンパンジーやボノボの行動観察から、共感が社会的絆の基盤であることを示す。
ドゥ・ヴァールは情動伝染を共感の進化的起源として位置づける。霊長類の群れにおいて仲間の苦痛や喜びが伝播する観察事例を通じ、これが社会的結束の前提となることを論じる。
本書の根底にある主張。ドゥ・ヴァールは道徳を神や理性の産物ではなく、社会的動物の進化的遺産として位置づける。霊長類の行動から道徳の「ボトムアップ」な起源を論じ、トップダウンの宗教的・哲学的道徳論と対置させる。
ドゥ・ヴァールは視点取得を共感の高次形態として論じ、チンパンジーが他個体の知識状態を考慮した行動をとる実験例を示す。この能力が道徳的判断や社会的協調を支えると論じる。
本書では「冷たい計算」による利他主義論に対する批判として登場する。ドゥ・ヴァールは、霊長類の助け合いは計算より共感に根ざしており、互恵性は感情的絆の副産物であると主張する。
本書では共感の神経科学的証拠として取り上げられる。ドゥ・ヴァールはミラーニューロン系が「シミュレーション」として他者の状態を内的に再現する仕組みであり、情動伝染と認知的共感を橋渡しすると論じる。
本書では「人間は本質的に利己的」というホッブズ的・社会ダーウィン主義的世界観への反論として、霊長類の豊富な親社会的行動事例が提示される。共感がこれらの行動を動機づける感情的エンジンとして機能することを論じる。
本書でドゥ・ヴァールがチンパンジーとボノボに観察した具体的な共感の証拠として重要。敗者を慰める行動は感情的共鳴の存在を示すとして、動物の共感論争に実証的根拠を与える。
本書ではカプチンザルの不公平報酬実験(同じ作業で異なる報酬を受けた際の抗議行動)が紹介される。公正感が人間の道徳システムの進化的先駆けであり、共感と並ぶ社会的絆の柱であることを示す。
ドゥ・ヴァールは共感を社会的絆の感情的接着剤として論じる。チンパンジーやボノボが特定個体との絆を選択的に強化し、その相手に優先的に共感・援助を示すことを観察データで示す。
ドゥ・ヴァールは共感能力が固定的な本能ではなく、社会的経験によって発達・強化されることを示すために神経可塑性を参照する。養育環境や文化的文脈が共感の発現度合いを左右することの神経学的根拠として論じる。
ドゥ・ヴァールは共感が生得的基盤を持つ一方、文化・養育・社会的文脈によって形成・抑制されうることを示すために用いる。「共感は訓練できるか」という問いへの答えとして社会的条件付けの役割を評価する。